迷子の大人たち

 イタリア人でカトリックのマストロヤンニを除いて後はすべてユダヤ人という設定。プロテスタントというアメリカの主流派がもう主流ではないような錯覚に陥る。そのイタリア人のマストロヤンニがシャーリー・マクレーンに恋をして愛を捧げるという状況設定にあまり説得力がない。裏切りと幻滅との堆積により、この上なく冷たく意地悪な皺だらけの肉のたるんだバアサンになってしまった女性に対し、30年以上も前に見た彼女のダンスシーン以来心に抱いていた恋心を完遂するなんて、イタリア人にあるまじき行為のように思える。イタリア人とユダヤ人の恋愛に周囲が巻き込まれて大喧嘩になるが、最後は神父とラビと双方の宗派の教導者の立会いの下に異教徒婚ということになる。その辺のところは面白いと言えば面白い。ジェシカ・タンディマクレーンの母で、マクレーンの娘にはキャシー・ベイツマーシャ・ゲイ・ハーデンケイト・キャプショーという風になかなか豪勢なキャスティングなのだが。

1996年 米 ビーバン・キドロン