猫が行方不明

 つまり、すごくフランス的な映画で、日本人もつらいがフランス人もつらそう、という映画。男が怖くてホモと同居しているメーキャップ・アーティストがヒロイン。休暇中に預けた猫が行方不明に。猫を探すために組織的に活動する、昔パリジェンヌだったおばあちゃんたち。古きよきパリも破壊されていく。こころ惹かれた若いドラマーと情交するが、一夜だけの関係。優しいけれど頭の弱い男に好意を寄せられて困惑したり、同僚の女性がレズで言い寄られたり、夜の町で拐かされそうになったり。
 「男って、みんなバカよ」
 メーキャップ・アーティストといっても結局モデル撮影現場でこづきまわされるだけ。モードの街でも光を浴びるのはほんの一握りの人たちだけ。隣人の芸術家が都落ちして引越し。その男は密かに彼女の肖像画を描いていた。しかしそれ以上にこころが通うわけではない。いい男はみんな去っていく。
 街でも走って、泣いてみたりするしかないのか。―というだけの映画なんだけど。

1996年 フランス セドリック・クラビッシュ