U.N.エージェント

 ボスニア・ヘルツェゴビナのジェノサイドを極めて衛生的に表現したテレビ映画。検察官に扮したブノワ・マジメルの美貌も、この衛生化という偽装に加担しているかのようだ。大勢の子供、女性、老人が虐殺されたというその実相を誰が直視しうるだろうか。映画では夥しい死臭にマジメルが何度も嘔吐するが、その想像を絶するであろう悪臭を映画の観客は嗅がなくとも良いことになっている。しかし十二分に気が滅入り、十二分に人を絶望させるに足る映画だ。

2008年 仏・ポーランド・伊  ジャコモ・バティアート