ラスト・オブ・モヒカン

 開拓時代のアメリカでフランスとイギリスが争った「フレンチ・インディアン戦争」。イギリス人とフランス人が、インディアンと彼らが、またインディアン同士がなぜ殺しあわなければならなかかったのか、とにかく殺戮の必然性というものがリアルに伝わってくる。強いものが勝つ、敵は殺しつくす、というシンプルな原則が悲劇として見るものに迫ってくる。ダニエル・デイ・ルイスの精悍な美貌と、マデリーヌ・ストウの匂い立つような美しさがなければ、到底救いがないような血みどろの人間の生の実相がこの映画には描かれている。

1992年 米 マイケル・マン