ジャンクション

 意味がありそでなさそうな邦題だが、原題とは似ても似つかない。当然原題(White Man's Burden)の方が内容に沿っていて意味深長である。
 白人と黒人の地位、立場が逆転している世界。裕福で社会的地位もある黒人たちが支配する社会の中で、白人主人公が理不尽な扱いを受け、犯罪に走って自滅していくという話。白人たちが黒人の立場を思いやれるようになるための教訓映画か。白人側の年来の恐怖が実現したような、白か黒かどちらかしかない世界。黒人の会社社長の邸宅に勤める白人のメイド。その社長の息子が自宅に白人の娘を連れてきて、母親が一瞬眉を顰めるという、完全に「招かれざる客」での構図が逆転した世界。夜の街を徘徊するのは白人の落ちこぼれであり、ホームレスも白人たちである。一方警官はほとんど黒人であり、些細なことで白人たちを虐待するというふう。現実の陰画としての世界で、白人側への問いかけの映画である。監督は日系人らしいが、白人と黒人の宥和を期してのこの一種過激な映画が、余計なおせっかいと思われなければいいが。

1995年 アメリカ デズモンド・ナカノ