ショーシャンクの空に

 ラストのモーガン・フリーマンの語りが素晴らしい。ジュワタネホの海岸は光り輝いていた。これはすべての罪の償いが終った後、男たちが見た太平洋の輝き、その耀きが照らし出した追憶の物語だ。だから二十年間の服役も、男達に強姦されたことも、独房に閉じ込められたことも、すべて遠い遠い記憶のように語られる。その苦痛、その悲惨の苦い原液は、語られるときすでに、さわやかな炭酸で薄められるように、追憶で薄められている。その追憶の空には「フィガロの結婚の」の天上的な美しい声が流れている。
 本作はスティーブン・キング原作の映画の最高傑作とされているけれど、ラストの海岸のシーンや、「手紙の二重唱」のシーンなどは映画として追加されたものだ。そもそもキングの小説はどんな意味でもヒューマンなものではありえないのだから。

1994年 米 フランク・ダラボン