誘う女

 全くの駄作。素直に時系列でストーリーを追っていけば、野心多き悪女の悲劇にもなるところを、下手に関係者のインタビューで構成するみたいなことをしているから台無し。実話に取材した小説の映画化とはいえ、もう少しやりようがあるのではないか。
 テレビに出る、という野望のためにありとあらゆる手を使い、最後はジャマになった夫を一種の完全犯罪で殺してしまい、あげくに自分も殺されてしまう。この現代の悲劇と言ってもいい話を、一見モダンさを装った、実はすっかり空気の抜けてしまったぶつ切りの話にしてしまった。こういうシナリオをニコール・キッドマンという目を話し難い美人女優に演じられると一層の苦痛である。キッドマンは見たいがも映画は見るに耐えぬ駄作だという、ダブルバインド状態に悩まされ、苦痛を感じながら結局最後まで見た。

1995年 米 ガス・ヴァン・サント