4分間のピアニスト

 世評はそれなりに高い映画ではあるが、話も暗く、画面も暗く、ドイツ映画なのにフランス映画なみにエグいこの映画に、私は感動し損ねてしまった。獄中でピアノを教える老女も教わる方の女受刑囚も、そろいもそろって自ら不幸を呼び寄せてしまうような人間である。そして老女の絶望も受刑囚の憎悪も、ピアノがそれを解放してくれたというような話とは素直に受け止められなかった。しかし感動し損ねた一番の理由は、元天才ピアニストたる女囚の演奏そのものにある。彼女のいわゆるモダンな奏法は、先人達がせっかく苦心をしてピアノを打楽器から歌える楽器にまで高めたのに、それを再び打楽器に引きずり下ろすだけの演奏のように思えた。

2006年 ドイツ クリス・クラウス