ピアノ・レッスン

 西洋文明の粋であるピアノとともに、一人の西洋女性をマオリ族に差し出す、という変種のオリエンタリズム映画。この女性には聴唖という聖痕があったが、さらに指の切断という供犠もつけ加えられる。映像美もあり、音楽も素晴らしいが、この供犠のシーンがあまりにも禍々しくて好きになれない映画だった。
 19世紀のニュージーランド1860年のイギリス―マオリ間の戦争、マオリ戦争の前なのか後なのか。ハーヴェイ・カイテル扮するジョージはマオリではなく、マオリに同化した西洋人ということらしい。いかにもマオリ族にぴったりというカイテルだが、彼は生粋のユダヤ人である。マオリ族なら「クジラの島の少女」のクリフ・カーティスのほうが恋愛映画としての見場も良いと思ったが、彼はこの映画にチョイ役で出ていた。この頃彼はまだほんの駆け出しだったのである。
 ホリー・ハンターとアンナ・パキンの主演・助演ダブル女優賞受賞作だが、11歳でアカデミー賞を取ってしまうということは果たして幸せなことなのか。10才で助演女優賞を取ったテイタム・オニールはその後「ベアーズ」以外は役に恵まれず、最後はヘロイン中毒になってしまう。アンナ・パキンの方は最新作は2011年の「スクリーム4」だが、ほとんどその他大勢的な端役であるらしい。

1993年 フランス・ニュージーランド・オーストラリア ジェーン・カンピオン