コンペティション

 ホロヴィッツ曰く「世界のピアニストには三種類しかない。ユダヤ人とホモと下手糞だ」。また「大先生中の先生」レシェティツキーがピアニストが大成するための三つの条件として曰く、「とにかく子供の頃から『天才』として騒がれていたこと、スラブ系の血をひいていること、そして、これが肝腎なのだが、ユダヤ人であること」。だとすれば、アメリカ系ユダヤ人のリチャード・ドレイファスがピアニストに扮するのは理にかなっている。相方のエイミー・アーヴィングも父方はユダヤ系である由。「シャイン」のジェフリー・ラッシュ本人はイギリス人だが、その演じたデイヴィッド・ヘルフゴッドはユダヤポーランド移民の子、「戦場のピアニスト」のシュピルマンはもちろんユダヤ人で、演じたエイドリアン・ブロディユダヤ人、しかし「海の上のピアニスト」のティム・ロスは名前からしててっきりユダヤ人かと思ったが、仮はアイルランド系イギリス人だった。
 実際のピアニストではさらに、アシュケナージ、ギレリス、ゼルキンバレンボイムルービンシュタインと本当にユダヤ人のピアニストは多数を数える。
 苛刻なピアノ・コンテストの実態に恋愛を絡めた映画だが、ベートーヴェンの「皇帝」とブロコフィエフのピアノ協奏曲第三番がたっぷり堪能できる映画である。

1980年 米 ジョエル・オリアンスキー