スリーパーズ

 少年院時代、自分達を陵辱した看守に対する少年たちの復讐の物語。
 一番すっきりした復讐は、四人の仲間のうち、成人してヤクザになった方の二人組が、レストランで見かけた看守の一人を単純にその場で射殺する形に現れる。彼らはそのまま都会の闇に身を隠してもよかった(必要とあらば不運な目撃者を始末してでも)。ところが彼らはドジなことに捕まってしまって、残った二人の仲間が、彼等の救出と残りの看守への復讐を同時に果たそうとしていろいろ手を尽くすことになる。
 これが現代のモンテ・クリスト伯の、恐るべき忍耐の後の復讐の形なのだろうが、どうもすっきりしない。肝腎の、成人した少年の一人である新聞記者の役割も良く分らない(キャンペーンを張るほどの力がない)。もう一人の成人した少年である、検事補の青年の行動もクリスト伯ほどには颯爽としていない(モンテ・クリスト伯は読んでいないが多分そうだろう)。
 いずれにしても、もっとストレートに描いて欲しい映画だった。ストーリーとはあまり関係のないところでダスティン・ホフマンの惚けた弁護士ぶりがわずかに面白かったが、ブラッド・ピットの検事役はとても見れたものじゃなかった。
 最後にこの物語が実話ともフィクションともどちらでもないようなキャプションがついていたが、それは実話と断言すれば差しさわりがあるからというより、映画の出来に自信がないせいのように思えた。―ちょっとおかしい話に見えるかも知れないけど、本当のことなんだからそのつもりで見てくれよ、とでも言いたいような。これはどうもベストセラーになった原作の小説が詐欺的に実話を騙ったものであったらしく、まるまるフィクションだと捉えるべき話で、そうなると著者の不運な体験への同情というものが消えてしまい、たちまちただの駄作になってしまう小説/映画である。

1996年 米 バリー・レヴィンソン