ブロウ

 伝説の麻薬ディーラー、ジョージ・ユングの生涯を描く。一時はアメリカのほとんどのコカインを仕切っていたというこの男の犯罪は、それがあまりにも淡々と描かれるため、それは彼の意志でも運命でもなく、ただそこにある状態、たまたまそこに投げ出されてあったもののようにしか見えない。友人の裏切りとか、妻と娘との別離とかがあるが、愉楽に満ちた彼の人生の代償としては、その悲しみのようなものは釣り合いが取れないほど小さい。回顧の中の彼の人生は、いい思いをしたという記憶に満ちているのだ。その話がこうして映画にまでなってしまい、ジョニー・デップの美貌まで与えられてしまうと、この男から二回も上前をハネられたような気がする。

2001年 アメリカ テッド・デミ ニューライン・シネマ