コーンウォールの森へ

 何だろう。いかにも良さそうな話なのだが、見終わると少しはぐらかされたような感じが残る。交通事故で頭を打ってすこし知能障害のある青年と、悪妻を殺し勤め先の銀行から大金を着服して逃亡している初老の男が主人公なので、見ていてヤキモキさせられる。そのヤキモキした分、最後に見事にカタルシスを与えられるのを密かに待ち望んだが、その期待ははぐらかされた。敵役の青年の継父、デブと称される悪徳漢の冷血ぶりが結構みどころで、その継父の名がデ・ウィンター、初老の男がミスター・サマーズ、というネーミングは、露骨な勧善懲悪の枠組みの映画みたいだが、そんなことはない。主人公の青年は当然のように、「冬」と対決し、とりあえずは勝利を収めるのだが、そこには、何らのカタルシスもない。つまりは、すでに「夏」は去ってしまっているのだ。
 二時間、二千円のコストで手っ取り早いカタルシスが手に入れば、明日の午前中くらいまでは元気が保てる。映画に求めるものとしてはそれで十分のはずだ。それとも、このようなはぐらかしの映画を沢山見て、はぐらかしに満ちた現実というものへの耐性を身につけたほうがいいのか。

1998年 英国 ジェレミー・トーマス