死刑台のエレベーター(1958年)

 このつまらない映画が当時斬新だとして歓迎されたという。美しく暗鬱な青年モーリス・ロネ、マイルス・ディヴィスの即興演奏、「太陽がいっぱい」のアンリ・ドカエのカメラ・ワークと、この映画のいくつかの美点を数え上げても、それでも面白くはならない。ヌーヴェル・バーグなどつまらない映画運動だと言ってしまいたくなるほどだ。この映画と現在の映画を比較するのではなく、この映画にそれ以前の映画との断絶を見出す目がなければ、自ずと感想はそのようなものになる。そしてつまらないと断じるその決定的要因は「ヌーヴェル・バーグの恋人」ジャンヌ・モローに、残念ながら何らの性的アトラクションも感じないということである。
 この映画はルイ・マルだが、ゴダールなどは映画祭に乗り込んで受賞を妨害したり、商業映画から離脱したりしたかと思うと、すぐ商業に復帰して自らも賞を得たりなどしている。彼のものした諸抵抗、諸製作などは現在から見ると、ただ映画という興行界の中での、見え透いたひと踊りに過ぎないという感がする。
 話自体も、メインとなる間男による夫殺しと、サブとなるチンピラの殺人とに、殺人を二重にした事が、サスペンスを盛り上げるというよりは、ただ焦点をぼかすだけの効果しかないように思われた。

1958年 仏 ルイ・マル