シチリア ! シチリア !

 「感動大作」というものにご用心 ! 確かに上映時間が二時間半とイヤになるほどの長尺なのは「感動大作」風であるが、この映画に「感動」する人が果たしているのだろうか。そもそも編集がニューシネマ風のぶつ切りでは、感情が充填されて感動というものに昇華する前に、連続性が中断されてしまい感動のしようがない。第一この映画に出てくるイタリア人のバカさ加減をどう好きになれというのか。あまりにも愚かでありすぎる。こんな人たちが圧政の下で貧困と飢えに苦しみながらもなんとなくノホホンと生きていることが感動の対象にでもなるのかな。この映像美(ただし人間を除く)、このエキストラの動員、そしてこれだけの無内容の映画を作るという奇妙な情熱。それは多分、シチリアという地に実際に生きて、そこでいくらかの感情的支出をした人間にしか分らない情熱なのだろう。

2009年 イタリア ジェゼッペ・トルナトーレ