パリより愛をこめて

 タイトルはかの名作に対するオマージュの意味か。しかし、くだらなくつまらなく、全然オマージュになっていない。入道頭のでぶでぶトラボルタにもはや魅力はないし、ストーリーもテロリストを悪役とする単純極まる設定。だいたいテロリストに扮するアラブ系の役者って何を考えてんだろう。自民族のイメージ低下に貢献するだけの役に唯々として就くなんて。またまた女優(カシア・スムトゥニアク)が不作で、開巻五分以内に殺される役どころかと思ったが、最後まで出ずっぱりで、しかも実はテロリストだったという設定に呆然。テロリストを説得するのに、それがいくら自分のフィアンセだからといって、「愛」を持ち出してきたのに、失笑するのを通り越して呆然。案の上、ただ説得に失敗して、それで終わりなのでさらに呆然。秘密警察だかCIAだか、とにかくアメリカ人が外国で乱暴狼藉の限りを尽くすというパターンの映画で、シナリオがよければそのパターンに快感と共に乗せられもするが、かくも不良でダレるだけのシナリオでは、これだけ人を殺してこれだけ物を壊して、後始末は誰がする、フランス警察は何をやっている、という出なくてもいい疑問が出てくる。これがリュック・ベンソンの原案とは。自国をアメリカ人に蹂躙されるような物語を喜劇として作る、フランス人の心理は興味深いけれど。ジョナサン・リース=マイヤースは好きな俳優だが、トラボルタに食われたわけでもないのに今回は全く魅力なし。

2010年 仏 ピエール・モレル