帰郷

 この映画は一度見ているはず、と思っていたが、どうも全く見ていなかったらしい。きっと車椅子に乗った傷病兵の話など見たくも聞きたくもなかったのだろう。反戦というスタンスがちょうど注目される時期だったのか、反戦と「愛」というテーマが、高い評価を受けた映画らしい。しかし見てみると、「愛」というより、「不倫」と言ったほうがふさわしい話で、「反戦」と「不倫」という、互いに関係のないテーマを隣り合わせにしただけの話に思えてくる。人妻たるサリー(J.フォンダ)が傷病兵ルーク(J.ヴォイト)を愛しているのならともかく、夫のボブ(ブルース・ダーン)が帰国すると、彼を傷つけるほど冷酷にはなれず、未だに夫を愛しているということにしてしまう。浮気をした妻に、いくら本当は愛していると言われても、その妻は他の男との性交に「こんなのはじめて」(日本語字幕)と言っているとしたら、慰めにも救いにもならないような気がする。まさか戦争に行くとその間に妻を寝取られるから反戦とする、というわけでもあるまい。愛という話とは別に、出征で夫が留守の場合、妻にはその寂しさを紛らす権利がある、と主張しているのかとも思った。なにしろアメリカ映画なのだから。反戦については単に、十分な理由なく人を殺せば罪悪感に一生苦しむのだから、戦争反対と言っているだけ。つまり理由(大義)さえあれば、戦争OKと言っていることになる。それなら、と言うので、「テロリスト」という理由をアメリカは設定したが、それはまだまだ十分な理由足りえているのか。

1978年 米 ハル・アシュビー