フェアウェル さらば哀しみのスパイ

 フランス国家保安局DST、KGB、CIAの老獪な駆け引き。DSTと協同で情報を得ていたロシアの情報提供者グリゴリエフ大佐を、最後はCIAが自らのスパイを守るために売ってしまう。そのCIAのスパイとは大佐の上司でかつかつて妻の恋人でもあったKGBの高官だった、という苦いオチ。
 主演のエミール・クストリッツアがまるでカジモドのような容貌魁偉な醜男なのに妙に女に持てるスパイに扮する。なんとなくそぐわないものがあったが、彼自身、世界三大映画祭で監督賞を得ている監督らしい。それほどの功績のある男ならばなるほど女性もよろめくかもしれない。自分の映画を見るのが大好きなレーガンと冷徹なミッテランが腹芸を繰り広げるところが面白い。

2009年 仏 クリスチャン・カリオン