グランド・コントロール 乱気流

 どうして人間はこんな毎回の綱渡りを強いられるような交通システムをこしらえてしまったのだろうか。管制官の職人芸的な仕事に感心する前に、そのことのほうが疑問に思えてくる。そもそも管制システムというものがあまりに脆弱過ぎるのに驚く。停電 ? 回路のショート ? アンテナに鳥がぶつかる ? 想定されるはずのこれらの事故に対するコンティンジェシー・プランがあまりにお粗末。格安航空がのさばれば尚更のこと、航空業界もコスト優先である限り、飛行機に乗るのは考え物だ、と思わせてくれる教育的効果があるが、映画としては、話が全て定型的でつまらない。キーファー・サザーランド扮する管制官が昔の事故から受けたトラウマに悩まされるところの描写は、定型的どころかあまりに説明的で興ざめ。「今を生きる」で破滅する青年を演じたロバート・ショーン・レナードが出ているのは個人的には嬉しい再会だったが、あいにく今回は役どころがただのハネッ返りの青年だったのが残念。ケリー・マクギリスにも往年の色気はないし。だいたい、グランドとグラウンドは違うし(野球グランドというから、いいのか)、乱気流(タービュランス)は関係ない話だし、日本語のタイトルが恣意的なのは相変わらずだが、今回は、デタラメにもほどがあると言いたい。

1998年 米 リチャード・ハワード