ノートルダムの鐘

 次から次へと繰り出される唄また唄、その合間を縫って機関銃のように打ち出される言葉また言葉、たまたまガラガラの映画館で観たせいか、ひときわ歌手たちのまた声優たちの声が響いてきて、ひたすら声に圧倒され続けた観劇体験だった。
 私の中にもフロロのような邪悪な心、エスメラルダを嫉妬する心、カジモドのように自分を不幸な人間と見做すマイナス思考があるから、この映画を理解できるわけだが、この世界が、唄声の中でハッピーエンディングを迎えられない世界であれば、私の心はいったいどこに行けばいいのだろうか。映画が終わり館内に白々と灯りが点いたら、とりあえず映画館の外に出るしかないのだが。

1996年 米 ゲイリー・トルースデール、カーク・ワイズ