Marley & Me

 犬を愛するのもいいが、少しはしつけというものをしたらどうかと思う。新聞のコラムニストで、いい暮らしをして、家族に恵まれて、それで犬が病死(限りなく老衰死に近い)したくらいが、一体なんだというのかな(一応私もれっきとした愛犬家です)。
 映画自体がつまらないから、どうでもいいようなことだが、邦題がまたまたひどい。毎回邦題に文句ばかりつけるのは芸がないのは重々承知だが仕方がない。邦題は「マーリー、世界一おバカなナントカカントカ」というもの。「おバカ」という言葉は口にするにも耐え難い、なんとも嫌な、軽薄な、無責任な、非美的な、不誠実な、いい加減きわまる言葉だ。お笑い芸人に席巻されてしまった国の、堕落した言語の一例。猫も杓子も「感動をありがとう」「元気をもらいました」と言う、キッチュが蔓延している国の、この均質的な国民。先日はテレビで某芸人が番組で高飛込みをやらされて骨折したという話を取り上げていた。ニュースとしてそれを報道するのはともかく、それから水に飛び込むときは体をまっすぐにしなければ危ない、などという話をエンエンとやっている。芸人にムリを強いるバラエティー番組で事故が生じたからと言って、一般国民に対処法を説明してどうする。そんなことに公共の電波を使っていいのか。と、ここまで言うと昔いたヒステリックな道徳家みたいでイヤだけれど。「おバカ」というのは、アメリカ(の背後の金融資本)、中国(を仕切る共産党)、韓国(親族の汚職で尻に火がついた忘恩の大統領)の悪意に取り囲まれて、なおも諸国民の公正と信義を信じている日本国民にぴったりの言葉ではある。
 はい。こんな映画を見て、そんなテレビを昼から見ている私も、おバカな日本国民のひとりです。

2008年 米