クレアモントホテル

 原作エリザベス・テイラー(もちろんかの女優ではなく、「エンジェル」の作者)。善良な、好意にあふれる青年を見ているのは気持ちが良い。作家志望の青年と言えば善良な男と相場が決まっているが、この十人並みの容貌の青年(ルパート・フレンド)が、その善良さの故にだんだんローランド・ブルームみたいな正統派二枚目にも見えてくる。
 観念と実物との距離が生み出す悲劇。老女と青年は祖母と孫という虚構の観念で結ばれている為に、この距離の悲劇からは免れている。一方、老女とその娘と本当の孫、青年とその母親とは、それぞれが相手に投影する観念が実物から乖離しているために関係に齟齬を来たしている。いかにそのままの人間を「愛する」ことが難しいことか。
 パルフリー夫人に扮したジョーン・ブロウライトはローレンス・オリヴィエの奥さんで、つまりバロネスということになる。

2005年 米・英 ダン・アイアランド