マレーナ

 少年の日の淡い初恋を描くなどとされているけれど、見てみたら年上の女性に対する少年の憧れなどというカワイイものではなく、むき出しの男性の肉欲に翻弄される戦争未亡人の話だった。なにしろヒロインの未亡人が弁護士の愛人になったりナチスや米軍の慰みものになったり村の女からは憎まれて暴行を受けたりして、最後は死んだはずの夫が生きて帰ってくると、夫は銃後の妻が受けたあまりの恥辱に病気になってしまうという話なのだ。
 フロイトの「文明とそれの不満」を読むと、性欲というものに悲観的にならざる得ないが、モニカ・ベルッチ(彼女とイザベル・アジャーニソフィー・マルソーってよく区別できない)の性的なくすぐりを楽しむ余裕もなく、映画の印象は憂鬱であった。

2000年 イタリア・アメリカ ジュゼッペ・トルトナーレ