スリーピング・ビューテイー 禁断の悦び

 エミリー・ブラウニングの剥きたての果物のごとき裸体が見られるが、話としてはあまり面白くなく、最後まで見るのには努力が要った。クレジットにはなかったが、これが川端康成の「眠れる美女」によることは間違いないらしく、そこに例のカンピオンが一枚噛んで、原作とは少し趣が変わる。ヒロインがバーで露骨な言葉を使って男を漁ったり、かと思うとなんだか小汚い病気の男とプラトニックの関係だったり、という余計なシチュエーションが加わる。さらに映画が日本に入るとそれに「禁断の悦び」なるポルノまがいの余計な副題がつく。かくて、市場に投入された作品に不可避の変質の現場に立ち会うことに。
 日本の原作では、少女の裸体を愛でるのはただのインポテンツの老人に過ぎないが、この映画では、少女を蹂躙するのは、性的な放恣さまで金の力でわが物とした経済的特権階級の男たちである。この違いは、ジェーン・カンピオンなぞには分るまい。

2011年 豪 ジュリア・リー