わが家は楽し

 貧困の詩学。名声高き画伯。謎の資産家。悪徳不動産会社社長。森永製菓の人事課長とその糟糠の妻。結核病みの青年。売れない女画家。1950年代の日本、既にこれだけの格差社会だったではないか。格差のスペクトルの両端に成功した芸術家と売れない芸術家がいる。その両端が結ばれて円環となったときに映画は幸福のうちに終る。

1951年 日本 中村登