パーフェクト・センス

 面白い発想の映画。
 それにしても最近のベッド・シーンでは女優が胸を全開にしているのが多い。昔はそういう風に気軽に胸を見せる女優は二流の女優で、一流はせいぜいチラ見せが限度だったのに。この映画でも細身のエヴァ・グリーンの意外に豊かな胸が全開。男性観客としては嬉しいやら逆に索漠とするやら。かつてまだ可愛かったころのメラニー・グリフィスがベッドでチラリとその花の蕾の如き胸を見せたとき、女の脹脛を見て空から落ちた久米仙人の如き官能の惑いを感じたものだが、今は女の裸身はありふれたものになってしまい、そのような目くるめく思いを味わうのは叶わぬ話である。
 そういう時代の恋愛であるから、昔我々が恋愛をして「恋は盲目」になってしまったことや、恋愛にともなう悲しみや喜びなどという感情を、今は自然には経験することができない。ここはウィルスによる感染症を導入して、その病気で感覚的に不自由に(最後は文字通り盲目になる)なったり、情緒の平衡を失って悲しんだり怒ったり喜んだりするという風にして、昔恋愛というものにともなっていた不自由と激情を、むりやり復活させてやるしかないのである。

2011年 イギリス デイヴィッド・マッケンジー