スラムドッグ&ミリオネア

 アカデミー作品賞始め錚々たる賞を総なめにした高評価の映画らしいが、端的にエグ過ぎる映画で、こんな映画を作る金があったらその金をスラムに回せよ、と思わず言ってしまいたくなる。動物保護のドキュメンタリー映画で、カメラで撮っている暇があったらその動物を助けろよと言いたくなってしまうのと同じ。やはり人間の悲惨さを安全なところから享楽しているということを出ない。最後に恋人の顔の傷がもっと醜くつけられていたら、享楽の対象を脱して、それこそ直視できない現実界というものになるのに。映画の外側では現地人子役の出演料が安すぎるという問題が出て、旧宗主国英国の搾取の構図が再び現れたかと思いきや、インドのほうでも子役の父親が人身売買まがいの養子縁組を持ちかけたりと、なかなか一筋縄では行かない英印関係を伺わせた。

2008年 英 ダニー・ボイル