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 トンネル事故を巡る検事と弁護士、政府、会社等利害関係者の攻防を描くなかなかの力作。日本でも、日本坂(1979、死者7人)や北陸(1972、死者30人)という大きなトンネル火災事故があったので、題材としても興味深い。
 この映画は、2000年オーストリアのスキー場で起きたケーブルカーのトンネル事故がモデルになっているらしい。この事故では犠牲者の中に福島県の6人の中学生を含む日本人10人がいた。犠牲者総数は155人と大変な数である。映画ではこれを高速道路トンネル内の自動車事故に変え、犠牲者も47人と控え目にした。実際の裁判ではケーブルカーの運行側は無罪となっている。控訴を受けた高裁判決も無罪。損害賠償請求訴訟の方は運行管理側やメーカーが和解に応ずる見通しらしい。
 これはテレビ映画だが、アメリカの商業映画「デイライト」(1996)などよりはるかに良質な映画である。スタローンの映画を見てしまったこと自体が不覚だが、この映画では、スタローンが何の策もなくただ事故現場に飛び込み、ただオロオロするだけなのである。最後のオチで「もう、トンネルはこりごりだ」と言うのを聞くに及び、スタローンの映画はもうこりごりだと思ったことだった。

2005年 オーストリア・ドイツ・スロバキア・イタリア ドミニク・オセニン=ジラール