最愛の息子

 子供に対し「愛」という名の迫害をもたらす恐るべきマザーの物語。このような母親は清教徒的な病的潔癖さという性癖をあわせもっていることが多いが、本編では、理想の「種」を探すためとはいえ、性的に放縦でもある女として描かれているので、より一層不気味である。そして、ヨリ目でオク目でワシ鼻で、歯が小さくて口の中が空洞のように見える、まるで歯抜けバアさんのような顔をしたキラ・セジウィックがその母親を演ずるので、生理的にも不気味なことこの上ない。何らかの効果を狙ってのこの女優の起用かと思ったが、彼女は監督ケヴィン・ベーコンの奥さんで、つまり縁故採用。もっと普通の美人女優だったら、こんな息苦しいほどのマザーの愛情を、どうせ映画だからと割り切って、息子の立場で楽しんでいたかも知れないのに。
 クリント・イーストウッドに感化されて自らも監督業を始めたベーコンらしいが、今のところ後が続かない。サンドラ・ブロックやマット・ディロンなどの仲間内の起用を脱して、有能なキャスティング・スタッフと組むところからやり直したらどうか。もっともハリウッド俳優を三人か四人たどれば誰でもケヴィン・ベーコンの共演者につながるというケヴィン・ベーコン数からすると、誰を起用しても縁故採用になってしまうから、ハリウッド外から採用する必要があるけれど。

2004年 米 ケヴィン・ベーコン
Loverboy 邦題「バイバイ、ママ」