アメリカ、家族のいる風景

 サム・シェパードジェシカ・ラングで、タイトルに「家族のいる風景」とあるから、「カントリー」(1984)と同じような、夫婦愛を巡る話なのだろうという予見をもってしまったせいか、あまり面白くなかった。第一、家族といいながら、出てくるのは、行きずりの女に産ませた子供(別々の母親で、二人いる! )と、子供がいると知って驚く男だし、そもそも原題は、<いまさら、親ヅラして現れないでくれ>、というものだから、タイトルに「家族」を冠するのは詐欺みたいなものだ。第二に、老いぼれたサム・シェパードにもうまったく魅力はないし、第三に、ジェシカ・ラングはまったくフツウのおばさんになってしまったし、というわけで感興を覚えるわけがないのである。母親役の高齢の女優、どこかで見たことあると思ったが、エンド・ロールを見たらエヴァ・マリー・セイントだった。このほかにジョージ・ケネディティム・ロスも出ており、ある意味で豪勢な映画なのだが、ヴェンダースだから仕方がないが、なにか非常に無機質な孤独が伝わってくるだけの映画だった。ヴェンダースと組んでサム・シェパードが脚本を書いた映画は、先に「パリ・テキサス」があるから、それを知っていれば、余計な予見を持たずに済んだはずだ。

2005年 ドイツ・アメリカ ヴィム・ヴェンダース
Don’t come knocking