オリエント急行殺人事件

 すでにデビッド・スーシェによるすばらしいポワロ像を得た今では、アルバート・フィニーによるポワロはただの奇矯なだけの男に過ぎないように見える。そのほか、ヴァネッサ・レッドグレーヴって実は美人だったのか、とか。ショーン.コネリーは脇役に回るとただの暑苦しいオッさんに過ぎない、とか。イングリッド・バーグマンがまたまた野暮な女役で出ている。自ら希望したという、少し神経質な宣教師役で、これで助演女優賞を取ったとは言え、「誰がために鐘はなる」(1943)の神的なマリアの面影はいずこに。

1974年 イギリス シドニー・ルメット