パニック・ルーム

 最近、銃乱射事件が相次ぎ、銃規制論議が再燃しているらしいアメリカ。しかしアメリカから銃が消えることを期待するのは、それこそ百年河清を待つに等しいことのように思える。それにいくら銃を規制しても、やる奴は刃物でも何でも振り回すだろう、と思っていたら案の定中国で刃物事件が発生した。
 ともかくアメリカは銃社会である。仮にもそのような社会の中で、この映画のヒロインのように、銃を持たないがために最初から劣勢にある被害者というものにどうしても同情できない。何でそんなウカツな奴らの災難に付き合わなければならないのかと思うだけ。そもそも「パニックルーム」などという究極の防犯設備を必要とする社会にいながら、暴力への直面を避けて銃を持たずにいるということは、自分たちの社会の本質を知らない、いい気なことなのだ。
 いざというときの母親の強さに感銘する、というのが明らかにこの映画のキモなのであろうが、しかしそれもこの映画の話の流れとジュディ・フォスターのキャラクターでは、こういう我の強い女だから離婚されても致し方ないだろうなと思わせるだけ。うかうかと犯罪現場に乗り込んでひどい目に会う元ダンナがえらい気の毒だ。総じて、やはり暴力があまりにエグ過ぎて、楽しめる映画ではなかった。

2002年 アメリカ デヴィッド・フィンチャー