イエロー・ハンカチーフ

 オリジナル「幸福の黄色いハンカチ」(1977)にもそもそも「感動」できなかったけれど、タイトルから「幸福」などという甘えた言葉を取っ払った、ドライなハリウッド・リメイク版、主人公も健さんではなく、とみに容色が衰えて普通のおじさんになったしまったウィリアム・ハートならどうだろう、と若干期待した。しかし、やっぱりというか、こちらは「感動」する気はサラサラないのでそれはいいとして、肝腎の映画的快楽というものに欠けている気がした。女優(マリア・ベロ)がどことなく薄汚く見えるので困ってしまう。これなら倍賞千恵子のほうが百倍いい。
 てっきり、ネタが切れたハリウッドが日本映画からネタを借りたのだとばかり思っていたが、もともとオリジナルの原作は、ピート・ハミルが口頭伝承を紹介して書いたコラムらしく、それを元に1972年にはアメリカでテレビドラマになり、翌年には「幸せの黄色いリボン」という唄も作られヒットしている。そもそもジョン・ウェインの「黄色いリボン」(1949)もこの伝承が元になっているという。だから、そもそも舶来の話が日本で先に現代の映画にされ、それを元にして今回本国でリメイクされたということだったのだ。武田鉄矢桃井かおり(本作にも顔を出している)の配置を参考にしているが、タイトルにはさすがに「幸福」を入れるようなことはしない。唄の方の原題は「Tie A Yellow Ribbon Round The Ole Oak Tree」というもので、これをすぐ「幸せの黄色いリボン」とやるわけだが、ジョン・ウェインの映画「She wore a yellow ribbon」も危うく「幸せの黄色いリボン」にされていたかも知れない。

2010年 アメリカ ウダヤン・プラサッド