緑の館

 この映画は興行的にも評価的にも失敗した作品らしい。大昔に一度見ているが、現在見てもやはり面白くない映画である。ラストシーンで、森の奥に光り輝くリーマ(オードリー・ヘプバーン)が現われるあたりは、もう完全に失効した人間の夢想のパターンを示している。早川雪洲が蒙昧な先住民の酋長というヒドイ役で出ているのも悲しい。
 しかし、この映画はまだ未見の頃、映画雑誌で見た一枚のスチール写真によって未だにかすかな愛顧の対象になっている。それは森の中でオードリーとアンソニー・パーキンスが抱擁している場面の写真であるが、森の中で降りそそぐ木漏れ陽を受けて輝いている、若いパーキンスの広い肩に美的衝撃を感じた。リーマの方はそれを演じた29歳のヘプバーンを原作通りの17歳の少女に無理に思いなすしかなかったけれど。しかしそのパーキンスも実際に見てみれば、ベタに革命を信じている熱血青年で、それに歌など歌われた日には、すでにそれはうざったい種類の人間でしかなかった。

1959年 アメリカ メル・ファーラー