ロシア・ハウス

 ロシア・ハウス」と言っても、もちろん「ムネオ・ハウス」のことではなく、ジョン・ル・カレ原作の正統的スパイ映画であるが、それのみならず、正統的恋愛映画でもあるので、できればミシェル・ファイファーの如く安っぽい顔の女優でなく見たかったところ。俳優も時代下ると品下るのは東西共通か。ショーン・コネリーは好きな俳優で、「ロシアから愛をこめて」など特に好きだが、この映画はつねづね、マット・モンローの主題歌に較べて話が軽すぎるのが難点だと思っていた。その「ロシアから愛をこめて」のシリアス版とも言える「ロシア・ハウス」なら、かの歌にもふさわしいと言いたいところだが、主演女優は前述の通りだし、いざ真面目な演技をされて見ると、ショーン・コネリーも適役とは言いがたい。真面目な恋愛映画には、彼の顔はいささか暑苦しいのである。なかなかうまく行かないものだ。

1990年 アメリカ フレッド・スケピシ