ツリー・オブ・ライフ

 これがホームドラマなどではなくガチガチの宗教映画だったので驚いた。 
 ブラッド・ピット扮する父の抑圧により、弟に攻撃性を発する兄(ショーン・ペン)が描かれる。その弟は後年死んでしまう(死の状況が全然知らされないので良く分らないが、自殺かも知れない)。その兄の回想という形になっているが、説明的なセリフは一切なくかつ時間も前後しているので俄かには話のスジがわからない。しょうがないので、禁則だがネットで「あらすじ」を検索しながら見た。すると例によって「ヨブ記」だ。神が人間を救済しようとしない不都合に困り果てたキリスト教徒が苦し紛れに生み出した不条理な話。息子を支配しようとする父の抑圧により、息子の攻撃性が発現すると言うのなら、神という父に抑圧された西洋文明が他者一般に攻撃的になるのも道理である。カミュなら不断に岩を押し上げ続ける筋肉の痛みにとどまり、人間にとどまり続けるところを、これらの宗教者たちはまたも架空の天国と架空のマリアを幻想して法悦にひたるのであった。
 この映画の有益な解説を提供してくれるのは、またしても「WOWOW映画塾」の町山智浩氏。あわせてチェックすることをお勧めする。同じWOWOWでも「W座」の二人組、小山某と安西某のノホホン解説とはまったく違います。WOWOW月額2,415円のうちに彼らの出演料が含まれているのなら、彼らの解説はまったく不要なので、5円くらい値引きしてもらいたいところだ。

2011年 アメリカ テレンス・マリック