ロック・オブ・エイジズ

 てっきり、トム・クルーズが若気の至りで出演してしまった映画かと思いきや、昨年度製作というバリバリの近作だった。五十歳のトムの容色はさすがに衰え、そのデブッぷりにますます磨きがかかったアレック・ボールドウィンも出ていた。往年の美男もこうなるとキャラ的にはポール・ジアマッティと大差ない。ほとんど劇画的造型ともいうべきクリアカットな美男美女らしき男女優が出ているが、オーラはまるで感知できず。歌には多少心が動き、これに出てくる楽曲にリアルタイムでのめりこんでいた人なら楽しめる映画だろうと思った。これはブロードウェイヒットミュージカルの映画化であると聞いて、ふと疑問が兆した。ネットで確かめてみたら、なんと、やはり、(当然のように)トム・クルーズは(以下、基本的に出演者全員)自ら歌ってもいた ! やっぱりプロの歌はいいな、とその伸びやかな高音に感心して、てっきり「口パク」だろうと思っていたのに。ボビー・ダーリンに扮したケヴィン・スペイシーや、「マンマ・ミーア」のメリル・ストリープの如く、俳優自らが見事に歌う作品が作られた後には、間違ってもアテレコの映画など今更作れないと気づいておくべきだった。とにかくトムの歌は一目置くに値する。「トップガン」では劇中で、歌手でなくて良かったね、と言われるくらいの歌唱力だったのに。周りが周りなだけにラッセル・ブランドもそんなにヒドく見えなかった。(ボールドウィンとのゲイ・シーンは想像したくないけど)。
 しかし、これら80年代のロック曲たち、ヒットチャートに登場したときこそそれぞれが斬新で革新的なものに思えたであろう曲が、このような一種定型的な凡俗の恋愛映画の中に回収されてしまうのを見るのは寂しくも感慨深い。