RONIN

 街中のカーチェイスが見どころで、一通を逆走するシーンなどいったいどうやって撮影したのかと思わせるが、それにしても巻き添えで一般市民がバタバタ死んでいくという不運が、精神衛生上良くないレベルまで撒き散らされている映画。こんなに一般市民を殺す前に、実際は蓋然性が高いと思われる、電柱にでも激突して一刻も早く死んで欲しい連中である。タイトルの元になったのは我が「赤穂浪士」の話だが、基本的に浪人と言えど一般町民に危害は加えないのが侍。ジオラマで見せるそのいでたちを始め、解釈が少しおかしいし、第一、他の工作員はともかく、主役のロバート・デ・ニーロが最後に元CIAではなく、現役の職員であることが明かされるので、「浪人」というタイトルが一体何なのか、不思議に思うところだ。ジェラルミン・ケースの中身に触れずに終わらせるのも、象徴的物語ならアリだが、これだけ多くの一般市民を具体的に殺した映画としては、いささかアンフェアである。

1998年 アメリカ ジョン・フランケンハイマー