失われた週末

 アル中の男の苦悩と更正を描き、作品賞その他アカデミー賞を四つ与えられた映画。脇役としてしか知らなかったレイ・ミランドは、もともと主役を張る美男ということだったらしく、ロナルド・レーガンの妻だったジェーン・ワイマンも美女ということだったらしい。いずれもアカデミー主演賞を取っている俳優であるのに、その演ずるキャラクターに感情移入できなかった。ミランドには例えばジェームズ・スチュワートのような愛嬌がなく、ワイマンには例えばジューン・アリソンのような可憐さがない。しかし、1945年にアル中の映画を作るというアメリカの余裕には驚く。1947年には日本でも公開されたが、アメリカ人はこんな映画を作る片手間に戦争をしていたのか、とこの映画を見た日本人は思っただろう。そして片手間に戦争をしていた連中に負けてしまったのだと。1946年にはキャプラの「素晴らしき哉、人生」が作られている。こうして、アメリカ人は豊かさのみならず「真・善・美」までも根こそぎ日本から奪い去っていった。

1945年 米 ビリー・ワイルダー