無頼の群れ

 昔、西部劇を見るときの楽しみだった、荒野の中で陽射しと風を受けて生きている人間や、砂と汗にまみれたその服などから感じていた官能的な美を、努めて感じようとして観たが、やはり、もうそういう映画的官能は甦ってこない。
 ヘンリー・シルヴァの怪異な容貌で生理的にも彼が犯人と最後まで思わせ、遅れて出てくるその妻の美貌と子供の可愛さとで、実は彼は無実だったと、これも生理的に観客に納得させるという、実に映画的に巧みな手法。西部の田舎町には不似合いなほどの壮麗な教会で、町中からかき集めてもこれほどはいまいと思うほど大勢の少年聖歌隊の賛美歌とともに、予断を持たされた観客もそこでグレゴリー・ペックとともに不本意ながら悔い改めることを強いられるようである。

1958年 米 ヘンリー・キング