フェーズ6

 最終の戦勝国アメリカで作られた映画だが、すでに戦争に勝利したという資源は使い果たし、人間相手に続けられた次なる戦争も不調続きなので、やむなくウィルスを敵に設定して、どのみち戦いを強いられる人間という不朽の世界観を刷新していく。ここにはすでに戦勝国の豊かさも自信もない。あるいは負けるべきところで勝ちが転がり込み、勝つべきところで負けに絡め取られたという風な、歴史の偶然の最先端に置かれた国での、方向性の喪失の象徴のような映画だ。何度でも幾度でも、人間という人間がすべてみじめったらしく死んでいくという状況に引き戻してやらないと気がすまない、というような映画。あるいは人情も物資も何もない砂漠に再度フロンティア・ラインを求める試みというべきか。アメリカに常に刷新というものを提供してきた、一度は失われたフロンティア・ラインを再生してみせるという刷新。その場合でもやはり人類の滅亡ということが不可欠の条件なのだった。

2009年 アメリカ アレックス/デヴィッド・パストー