新網走番外地

 「ブラック・レイン」(1989)や「ミスター・ベースボール」(1993)など高倉健が出演した洋画について以前悪口を書いた。これらの映画で「純日本人」を演ずる高倉がただの「デクノボー」にしか見えない、と。恰も高倉健が出演した某社CMの「自分、不器用ですから」という人間が、百戦錬磨の西洋世界に紛れ込んでしまったような、頼りない印象しか持てなかった。実際の高倉健は、このCMのもたらしたイメージ、無口、無骨、不器用な人間とはほぼ正反対の性格で、ユーモア精神に満ち、明るく、上下の別なく周囲に気を配る、そのような人である。
 番外地シリーズはあまり見ていないけど、新シリーズの第一作目の本作では、少年がそのまま大きくなったような男を演じている。思ったことはすぐ口に出し、怒るときは口を尖らせる、というようなまっすぐな人間を演じるときの高倉健には抗しがたい魅力がある。そもそも彼の本領の役どころ、任侠の徒にしても、ただの粗暴な人間なのではなく、そのようなまっすぐな男が世間の荒波にもまれ、次第に思いを内に秘めるようになったという内実を持つ人間なのだ。
 彼が出演した洋画はもう一本「ザ・ヤクザ」(1974)がある。これは昔見ているはずだが、あまり違和感を覚えたという記憶はない。引退したヤクザの幹部に扮した映画だが、野球監督や警察官などとは違う、リアルな日本人をそこに感じたためだと思う。さらにこれは未見だが「燃える戦場」(1970)という映画もある。これは軍人なので違和感なく見れるかどうか、微妙。

1968年 マキノ雅弘