カントリー・ストロング

 三島由紀夫スタンダール評「隙間だらけの完全さ」という言葉をふと思い出した。この映画も隙間だらけで、人物の愛憎関係が、ほとんど行きあったりばったりみたいに揺れ動いて一貫性がない。それでも定型のコード進行で流れ続けるカントリー・ミュージックに乗って、物語はちゃんと進行して行く。
 ほとんどの俳優が自分で歌を歌い、特にグウィネス・パルトロウはこの映画の後、半分歌手のようになってしまったらしい。本人たちの才能によるのはもちろんだが、短期間に歌手というものを仕立て上げるシステムが、アメリカ興業界では完成しているかのようだ。だとすると映画のシナリオなどもその制作技術についてはノウハウが完成し、作曲もさらには作詞までもがシステム化されているというのは想像がつくところだ。

2010年 米 シャナ・フェステ