L.A.コンフィデンシャル

 これは面白い。バドだバズだエドだシドだ、と人物の名前がややこしくて、全体の陰謀のスキームがはっきりしなかったが、それでも面白い。刑事達の来ているさりげないツィードのジャケットに、昔映画に必ず感じていた物象のエロスを少し感じた。 欲望の支配する世界の、善悪の底がぽっかり抜けているありさまがリアルに出ているので、このリアルさを維持すべく最後に善玉の刑事が二人とも死んでしまう結末をも予測した。いったんそれで終わらせておいて、ダニー・デビートがちゃっかり生き返って、「これがリアルワールドです。しかし観客の皆さんは映画に快感だけを求めているのでしょう。じゃ、これからその結局正しいものが勝つ、という快適な結末に向けてやり直してみましょう」とか言って、本編の結末になる、という構成はどうだろうか。

1997年 米 カーティス・ハンソン