ベティ・サイズモア

 全体的にハッピーエンドの軽いコメディーなのに、物語の発端が殺人、それも単なる殺人ではなく、頭の皮を剥がされての殺人というのは、端的にアンバランスである。そのシーンにショックを受けて、これは案外ハードボイルドかもと思って身構えて見続けても、結局は軽いお話のままなのだ。残酷で不快なだけのこのシーンがあるためにこの映画を二度と見たくないと思う人もいるだろう。それさえなければ、レニー・ゼルウィガー演ずるこの能天気なヒロインを愛して二、三度見れる映画かもしれないのに。しかし彼女の演技、「ブリジット・ジョーンズの日記」とまるで同じだ。
 原題はNurse Bettyで、何でこれを彼女のフルネームにしてしまうのか分からない。看護婦になって医者と結婚することを夢見るあまり、ついに自分が看護婦だと思い込む、というのが話のキモだから、何とか「看護婦」という言葉をタイトルに入れて欲しいところだが、「看護婦ベティ」では確かにしっくりこないし、「ナース・ベティ」ではまたまた別の妄想的イメージが湧いてしまうかもしれないし。まあ一回見れば沢山という映画だからどうでもいいか。というより、見なくともいい映画。

2000年 アメリカ ニール・ラビュート