ロシアより愛をこめて

 007映画の傑作とされるこの映画、主題歌も好きだし、イスタンブールやベニスなど魅惑的な街が出てくるので、時々眺めたくなる映画だ。
 今回眺めてみたら、ボンドが窮地を切り抜けるシーンは、相手が撃つ前にいろいろ不要な時間をかけてくれたので幸運にも助かっているにすぎない、ということに気づいた。この映画ではそれが二回もある。そう思ってみると、他のシリーズでも事情は似たようなものなので、相手が問答無用で撃ってくれば恐らくボンドはとっくに百回ぐらいは死んでいただろうと思った。逆にボンドが勝利する場面は、例外なくこちらが能書き言わずにさっさと殺してしまう形になっている。これは必ずしも作劇上のご都合主義ではなく、思わず語りかけたくなる、話を聞いて欲しくなるほどの、人間的魅力をボンドが持っているという事によっているのだろう。ウンチクのレベルでもいいから、教養というものを身につけることは、長生きの秘訣でもあるという教訓を007から引き出してもいいが、それはおそらく現実の世界では通用しない教訓だ。