バルタザールどこへ行く/少女ムシェット

 両作とも感銘を受けることはできなかった。むしろ、全く面白くもなく美しくもなく楽しくもない映画だった。ともかく個々の映像に、監督がしていたであろうような美的耽溺ができない。映像というものが物として貴重であった頃、人間が映っていてそれが動いたり喋ったりしているというだけで驚嘆していた頃の映画かと思うくらい、映像というものの希少性に寄りかかった映画だった。その頃であれば、野を転がって入水自殺をする女の姿を見ただけで何らかの衝撃は受けることができただろうけれど。今は誰でもデジタルで動画を作成でき、簡単に再生も出来るし、あっさり消去することも出来る。動画や映像はありふれたものになってしまっている。このとき、映画は一体何を追求していくのだろうか。特撮という技術に頼る ? あるいは、俳優という非日常的特権的肉体に頼る ? あるいはそれ以外に ?

バルタザール(1964年フランス・スエーデン)、ムシェット( 1967年フランス)
ロベール・ブレッソン