2014-01-01から1年間の記事一覧
これは面白い。バドだバズだエドだシドだ、と人物の名前がややこしくて、全体の陰謀のスキームがはっきりしなかったが、それでも面白い。刑事達の来ているさりげないツィードのジャケットに、昔映画に必ず感じていた物象のエロスを少し感じた。 欲望の支配す…
他者の思考を支配する―他者の自由を根源的に奪う―洗脳という、考えられる限りの最先端の「悪」を扱っている映画だと思ったが、フランク・シナトラの「影なき狙撃者」(1962)のリメイクらしい。つまり軍隊と洗脳というテーマは朝鮮戦争時にすでにあったの…
しばらく映画館というものから遠ざかっていた時期があったが、近所にシネプレックスができたとき、実に数年ぶりかで映画館で見た映画がこれ。映画館で見る映画の、その大画面、大音響というものに感嘆これ久しうした、と言えばおおげさだけれど。 映画という…
実話であるこの話に見るあまりにストレートな人間の善意というものに驚く。この善意は、やがてかの不良たちが白人夫婦を襲撃して彼等の生活を破壊してしまうことの可能性を排除できない。つまり無惨な悲劇になる可能性がある。現実はしかし人間の善意がうま…
ハイドリヒ暗殺事件を描いた映画「暁の七人」(1975)は、その暗殺作戦とやらがあまりにお粗末なので途中で見るのをやめてしまった。同じ事件を描いて一番古いこの映画は、すでに襲撃が終わったところから始まるが、「傑作」と言われるこの映画もやはり興味を…
三島由紀夫のスタンダール評「隙間だらけの完全さ」という言葉をふと思い出した。この映画も隙間だらけで、人物の愛憎関係が、ほとんど行きあったりばったりみたいに揺れ動いて一貫性がない。それでも定型のコード進行で流れ続けるカントリー・ミュージックに…
この頃の(もう三十五歳、役と同じ年齢だが)シャロン・ストーンの美しさに瞠目。男優は大したことなし。ただマーティン・ランドーが翌年の「エド・ヴッド」(1994)で見せた怪演を想起して見るせいか、どうということの無い役だったが、なんとなく重厚な演技に…
いったいどんな要素がこの映画を、かくもつまらないものにしているのか、驚きあきれつつそんなことでも考えてみるしかないようなひどい出来の悪さだ。その点はさておいて、この映画における「悪役」インゲン社はいったい何を象徴しているのか。神をも恐れぬ…
最後まで見ると、女性への夢に殉じて死んでいくギャツビーをグレートと形容する悲痛さが胸に迫ってくる。相手の女性がそれほど内実のない軽薄なデイジーであるから尚のこと。どうして翻訳小説から輸入映画まで、グレートを「華麗な」にしてしまうのだろう。…
話を変にひねったりしていない、実にストレートなつくりの映画だが、犯罪映画のサスペンスは充分味わえる。競馬場の窓口係、バーテンダー、(それに警官も)、これらは実に割りにあわない仕事だ。この世のおこぼれに与っているだけの生活。一方、競馬業という…
これがドイツ最初のトーキー映画らしい。悪女によって滅びる世間知らずの男性の話。一見ラブコメデイー風に進行して行くが、最後になってようやく悲劇と分る。意外に太目の若いディートリッヒが、大したことのない唄を歌っている。原作はハインリヒ・マンら…
なかなかフィジカルに見せる映画。 アメリカ人の孤独。夫婦関係も親子関係もまるですぐ切れてしまう糸のように頼りないものだし、職場での上下関係は仇同士のように非情だ。 レスラーたちの「ヤラセ」を否定するのは、大相撲の八百長に対する硬直した対応の…
都はるみがデビュー10年目に放った3曲目のミリオンセラーを元に、翌年作られた映画。都はるみはこの曲で日本歌謡大賞、日本レコード大賞、FNS歌謡祭最優秀グランプリなど17の賞を獲得、同年の紅白でトリの座をしとめて、歌謡界の頂点を極めた。 例に…
往年の二枚目俳優ロバート・テイラーを初めて見た。線の細い優男だが声が太いので、やはり宝田明などとは残念ながら一味違う。女優のシド・チャリシーは知らなかったが、後で見てみるとアステアやジーン・ケリーの相手を務めた有名なダンサーだった。道理で…
いわゆる三谷節バリバリの映画だが、コメディーに対して「現実と接点のない話だ」などと不服を述べるのは筋違いだろうか。しかし裁判を題材にしたコメディーだからこそ、現実にいそうな人間をあたうかぎり完全に近づけた人間、つまり人文的な人間を一人は出…
「ライフ・イズ・ミュージック 私の生きる道」。何とまあスゴい邦題。勝手に英語のタイトル作りまくり、蛇足のサブタイトル付けまくり。その英語も井上陽水「愛は君」「love is you」のようにシュールなもの。原題のニュアンスを出せる何かいい日本語はない…
何気なく「涙の連絡船」を口ずさんだのは、悲しいことがあったからだろう。歌詞がうろ覚えだったのでついネットで聞いてみたのが大間違い、たちまち都はるみの歌のうまさに参ってしまい、懐かしさも手伝ってネットで聞けるだけの歌を聞いた。聞くほどにその…
元祖、「危険な情事」。1971年に「ストーカー」を扱ったというのはかなり先駆的。この手のスリラーは被害者側をあまりマヌケにしないことが作品の質に直結すると思われるが、予想通りあっさり殺されてしまう刑事はアホとしかいいようがないし、イーストウッ…
見るに堪えない映画。 見どころは襖絵などのセットの城内装飾と侍及び女御達の衣服の華美さ加減のみ。1979年の映画らしいが、真田十勇士の話を粋に映像美にまとめる力がすでに日本映画にない。俳優達にない。かって清水次郎長と次郎長一家を描く映画にはそれ…
あまりに古い映画で、ケチのつけようなし。 大富豪の御曹司、だが兵役を回避する気なしという奇特な男が、なぜか機関士という裏方に回り、なぜか幸運に誰のものでもない美女と遭遇して恋に陥るという話。昔のチャンバラ映画で、切られた人間が血も流さずに、…
小津安二郎的ショットで淡々とある夫婦とその周辺の人間が描かれる。小津なら原節子という美人が出てくるが、こちらは美人がまったく出てこない映画。映像美という映画の悦楽をもたらすのに美人を出すというのは最も手っ取り早い方法なのに。2010年 英国 マ…
この映画は、ハンフリー・ボガートがアカデミー主演男優賞を取って話題になったためか、昔テレビで何回か放映されたが、その度に面白いようなつまらないような感じで見ていた。あまりなじみのない異国の話であるだけに面白いことは面白いが、ヒーローは汚れ…
「アフリカの女王」撮影時のジョン・ヒューストン監督を描くのだから興味津々のはずなのだが、アフリカに行く辺りですでに眠くなってしまう。なぜ皆がこのわがままな監督に振り回されてしまうのだろうか。映画に出演したり出資したりする前に、監督の性格も…
ハンフリー・ボガートの、「カサブランカ」の後、「アフリカの女王」の前の作品。 ボガートは境界例的性格異常の脚本家に扮する。殺人の嫌疑をかけられて関係が破綻する一組の男女の悲劇を描くが、そもそもその嫌疑がなくとも衝動的で暴力志向の強い男のため…
「真昼の用心棒」は私が見たマカロニ・ウェスタンの中で一番好きな映画だった。私が見たと言ってもこのフランコ・ネロのものが二本、ジュリアーノ・ジェンマのものが二本。それにクリント・イーストウッドがやはり二本か三本か。このジャンルの映画のタイト…
何か音楽というものに感動したい、打ちのめされたい、と思って映画館に行ったのだけれど、まあ予告編を見て事前に予測していた範囲内の話だった。しかし奥さんがよく出来た女性で、これは、都はるみの「夫婦坂」の英国版ではないかと思い、そちらのほうに感…
たまたま見たこの映画の舞台が、「ソフイアの夜明け」と同じブルガリアの首都ソフィア。原題がずばり「Sofia」。アメリカの娯楽映画だから「ソフィアの夜明け」みたいなブルガリアの現実はいらない。ただ殺し屋が安心して人を殺せるような暗い裏通りをだけ提…
予想通り気が滅入るだけの映画。映画の中の人物がことごとく一観客に過ぎないこの私より( 精神的にも肉体的にも )劣っている。同情して見るしかない映画はもはや映画ではない。社会学的考察の資料、ブルガリアというかつて共産圏に属していた国の現状分析、…
なんだか釈然としない映画。男を篭絡して利得を得ていく女の話らしいが、こういう映画は観客がその女に魅せられなければつまらないだけ。そして(裸体を見せるにもかかわらず)女がイザベル・ユペールでは魅せられようはずもない。 日本の風俗、風景も出てくる…
サム・ペキンパーの同名映画(1971)のリメイク。その旧作は見ているはずだが、内容はほとんど忘れており、初めて見る様な思いがした。後で調べてみたら、ダスティン・ホフマンの数学者が脚本家に、イギリス、コーンウェルの田舎がアメリカ南部に変わっている…